俺が車道で寝転がったり高い崖から駆け下りたりするのが好きなありふれた子供だった頃、日本ではサッカーはマイナーなスポーツだった。
通っている小学校にサッカークラブが無かった俺は、友達と協力して学校側に要求をねじ込み、サッカー少年団を創り毎日泥だらけになってボールを追いかけていた。 早起きして家を出、コンビニに寄って肉まんを一個くわえて学校まで走り、授業が始まるまで朝錬をするのが毎日の習慣だった。
運動の得意な奴は皆、少年野球のチームに入っていたが、俺は誘われても見向きもしなかった。
何故そこまでサッカーのとりこになったのか?
それは…
キャプテン翼のせいだろう。
俺に限らず同世代でサッカーをやっている奴のほとんどが、キャプ翼に影響を受けている。 いや、ほとんどなんて言わなくても良いかもしれない、むしろ全員がそうだと言っても過言ではない勢いである。
実際に今の日本サッカー界を支えているプレイヤー達は、その過半数がキャプ翼で育った人たちらしい。 中田英寿もキャプ翼大好きらしいし。
それだけではない。
キャプテン翼は世界100ヶ国近くで放送されているので、海外に与えた影響も計り知れない。
あのトッティやジダンもキャプ翼のアニメを観てサッカーを始めたのだ。 現イタリア代表なんかほとんどが翼大好き世代である。
なぜそこまで翼が流行したのか?
その原因はやはり「そんなわけね~よ」と突っ込みを入れたくなるファンタジックな世界観だろう。
ゴールネットを突き破って、更に後ろのコンクリートにめり込むシュート。
ゴールより高くジャンプしてオーバーヘッドシュート。
他人を踏み台にして跳ぶ。
シュートの態勢に入り、脚を振り上げてから撃つまでの間に延々と続く解説…
俺の中でトップレベルの怪奇現象は、緩やかなカーブを描いた地平線の向こうからせりあがってくるゴールだ。 どんだけフィールド広いんだよ!
作者の高橋陽一先生は草野球大好き人間で、連載開始当初はサッカーの事はあまり詳しくなかったという話もある。 シリーズが進んでルールを知ってしまった彼が描くキャプ翼は荒唐無稽さがなりを潜めて、水で薄めたスープみたいに味気ないものになってしまった。
日本も俺がガキの頃に比べればサッカーが普及したと言えるだろう。 だがそれは観る人間が増えているだけで、「実際にプレイはしてないけどね」という人が多いのも事実だ。 ブラジルなんかでは観客のでっぷり太ったおっちゃんが軽やかなリフティングを披露したりしている。 ぜひそこまでサッカーを大衆化させたいものだ。
では、どうすればいいのか?
やはりファンタジックなサッカーを見せるのが一番だと考える。 よし!アニメとか面倒だからサッカーの方を変えよう!
ルールを変更だ!
まずは…他人の身体を使ってのジャンプの許可。
フィールドを10倍の広さにする。
足の裏を見せて後ろからスライディングタックルにいっても良い。
ボールを持っていようがいまいがショルダータックルで潰して良い。
ゴールに登っても良い。
ゴツイ奴は袖をまくれ。
う~ん、まだまだありそうだが…
これじゃあ競技人口の方が居なくなるな…