何かに驚いている様を「鳩が豆鉄砲を喰らったような」という表現がある。
けど俺は「豆鉄砲を喰らっている鳩」どころか「豆鉄砲」すら見たことが無い。
一体豆鉄砲とは何なのか。
多分、豆のように小さな鉄砲か、豆を発射する鉄砲の事だと思う。
豆を発射する鉄砲なら確かに驚くだけで済みそうだが、小さな鉄砲の意なら鳩もただビックリしている場合では無いと思う。
下手をすれば致命傷である。
翌日のランチには鳩ムネ肉のパイとして華麗な転身を遂げ、テーブル界に颯爽とデヴューすることにもなりかねない。
「鳩が豆鉄砲を喰らったような顔」とは死相が出ている顔のことなのかもしれない。
しかし冷静に考えてみると、人間には鳥類の顔の表情の変化など、ほとんど判別できないのではないだろうか。
長年連れ添ってきた飼いインコの吉田カトリーヌ(♂ 1995~)などというケースは、吉田源三(♂ 1940~?)さんならあるいはその表情を読み取る事が出来るかもしれない。
だが今問題になっているのはその辺の公園で、人生やはり縦ノリですよ如何に部長が理不尽なれどワタクシ断固賛成至極と首を縦に振り続ける市井の鳩である。
正直ヤツらに表情があるとは思えない。
むしろ、常にビックリしているように見える。
今更豆鉄砲を突きつけられようがフルオート射撃を喰らおうが、もとから仰天顔なので本当にビックリしているのかを突き止めるのは至難の技であろう。
鳩め、とんだポーカーフェイスである。
友人にドッキリを仕掛けて「ははは、こ奴め。鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしておるわ。」と悦に入っている貴方。
その友人はビックリしたその表情の裏で、冷静に貴方という人間の価値を値踏みしているのかもしれない。
気を付けたまえ!